はじめに
みなさんは”コーチング”と聞いてどんなことをイメージされますか?
コーチングは、相手が自分の思うがままに動くようになることではありません。
コーチングとは、相手に問いかけることによって、相手の可能性を最大限に引き出し、行動を促し、結果を出すためのコミュニケーションスキルです。
簡単に言えばティーチング(教えること)の反対。それがコーチングです。
コーチングについてまだあまりよく分からないという方やコーチングを現場で実践しているがあまりうまくいっていないという方に向けて、コーチングの代表的なスキルについてご紹介していきます。

本記事では⑤フィードバックについてお話します。
フィードバックとは
これまでの記事では主に「傾聴」「質問」「承認」といったスキルについてお伝えしてきました。しかし、コーチングにおいてはそれだけでは不十分です。
コーチングについて学び始め、相手の話をよく聞き、指摘や指示ではなく質問によって会話を進めることができるようになり、相手の変化や成長についての事実を伝える(アクノレッジメント)ことができるようになっても「なんか物足りないなぁ」と感じる人も多いようですが、そういうときはこのフィードバックを意識するといいかもしれません。
フィードバックとは、鏡のように相手の姿をありのままに写すことです。

人は時として言ってることと本心が食い違う生き物です。本当は好きなのに「嫌い」と言ってしまったり、本当は変わりたいと思ってるのに「今のままでいい」と口にしてしまうことがあります。
こういうときにこそフィードバックが効果を発揮します。
コーチは相手に感じたことを素直に言葉にすることで相手が自分でも気づいていないことような「気づき」を与えることができます。
フィードバックにより「気づき」を促す
前述したように、フィードバックとは鏡となり相手の姿をありのまま写すことです。
そうすることで、自分では見えていなかった自分の姿に気づくことができます。
ポイントは相手の話をじっくり聴いて、感じたことをそのまま伝えることです。また、相手が言葉にしていなくても心の中で思っていることを感じ取り、それを言葉にして伝えることです。
相手はフィードバックを受け取り、自分では見えていなかった自分に気づくことで塾考し、何かをひらめき行動に写ります。
これがフィードバックの価値です。

ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバック
ポジティブなフィードバックであれば、相手の自己肯定感を高めたり、やる気があがります。
逆にネガティブなフィードバックであっても、より深いコミュニケーションが生まれ気づきを促すことができます。
前提として信頼関係ができていればの話にはなりますが、思っていることと言っていることややっていることが食い違った場合は、それをそのまま感じた通りに伝えてあげるのもコーチの大切な役割です。
ネガティブフィードバックには信頼と少しの勇気が必要
相手の本心と言っていることに食い違いを感じてネガティブなフィードバックをする際には、
「こんなことを言ったら相手を傷つけてしまうんじゃないか」
「こんなこと言ったら嫌われるんじゃないか」
など、言うことをためらってしまう時もあるかもしれません。しかし、本気で相手のことを考えるのであれば、敬意や多いやりの気持ちをもって正直に伝える必要があります。
もちろん言い方には注意は必要ですが、そういった言葉も相手が受け入れやすいように日頃から信頼関係を築いておきましょう。
終始にこやかで、本当は思っていることがありそうなのに、言葉では当たり障りのない良いことしか言わないコーチと、時として厳しいことも正直に伝えてくれるコーチであれば、どちらのコーチが良いかを考えてみるとわかりやすいかもしれません。
フィードバックの注意点
フィードバックをするときは以下の点に気をつけましょう。
①必要性が感じられること
②行動変容が可能であること
③忠告や命令にならないこと
④適切なタイミングであること
⑤伝わっているかどうかを確認すること
自分が強いフィードバックを言いがちなタイプ(言いすぎ)なのか、フィードバックが控えめになりやすいタイプ(言わなすぎ)なのかを理解した上で、適切なタイミングで適切なフィードバックを投げかけてみましょう。
具体的なフィードバックのやり方
前述したようにフィードバックには時として厳しいことやネガティブなことを伝えなければいけないため、言い方には特に注意が必要です。
では、具体的にフィードバックはどうすればいいのか?について考えていきましょう。
フィードバックには「Iメッセージ」が効果的
フィードバックをする際は、アクノレッジメントと違って、客観的な事実ではなく、曖昧な感情や思いに焦点を当てることが多いので、こういうときはIメッセージが有効です。
Iメッセージとは、「私にはこう見えます」「私はこう感じました」「私はこのように思いました」というように主語を「私」にした言い方です。
例えば、
「◯◯さんが本当にやりたいのはこっちじゃないかと思いましたがどうでしょうか?」
「◯◯ちゃんは本当にお母さんのことを大切に思っているのが伝わってくるよ」
「なんだか◯◯くん自信がなさそうに聞こえたよ」
「◯◯さんならまだ余力ありそうな気がするけど本当にそれでいいのかな?」
言いづらいフィードバックを言うときは
また、少し言いづらいことを言うときにはこういった前置きがあると相手も受け入れやすくなります。
「聴いていて思ってことを言ってもいいですか?」
「ちょっと感じたことがあるので、正直にお伝えしてもいいですか?」
ポジティブなフィードバックでもネガティブなフィードバックでも、自分では気づいていなかった一面に気づくことができるかもしれません。
まとめ
さて、今回はコーチングにおける基本的なスキル「フィードバック」についてお伝えしました。
これまで学んできた「傾聴」「承認」「質問」にこの「フィードバック」のスキルも身につけつことができればさらに相手に大切な「気づき」を与えることができるようになるでしょう。
みなさんもぜひ、日常生活や仕事の中で活かしてみてください。