はじめに
コーチングのスキルを教育に生かすために、「GROWモデル」を用いて、コーチングのステップを5つに分けてお伝えしています。前回のブログでは、ファーストステップとして、③「資源の発見」についてお伝えしました。
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今回はこちらの第四弾となるステップ④選択肢の創造についてのご紹介です。
まずは簡単に「GROWモデル」について復習しておきましょう。
GROWモデルとは(復習)

コーチングの典型的な進め方の一つにGROWモデルがあります。
コーチングの研究者よって多少の違いはありますが、基本的な構成は以下の通りです。
ステップ1:「目標の明確化(Goals)」何を目指すのかはっきりさせる
ステップ2:「現状の把握(Reality)」本当の問題は何か見極める
ステップ3:「資源の発見(Resource)」解決に利用できそうなものを探す
ステップ4:「選択肢の創造(Options)」別の方法がないか探す
ステップ5「意思の確認、計画の策定」(Will)実現に向けてのやる気を確認する
本記事ではステップ④「選択肢の創造(Option)」についてお伝えします。
ステップ④「選択肢の創造」他に選択肢はないか考えてみる
ここまでのステップで①目標の明確にし、②現状を把握し、③目標達成に必要なものを洗い出してきました。
次のステップは他に「選択肢がないか考えてみる」です。
なるべく多くの選択肢から決めてもらう
目標を達成したり、課題を解決する際にどうすればいいのか。具体的に計画をたて、アクションプランに落とす際にはどんな選択肢がベストなのか。そのためにはなるべく多くの選択肢から決めてもらうことが大切です。
選択肢が少ないとやることが限られてしまいます。
成績を上げるためには「勉強量を増やす」しかない?
例えば受験生を例にすると、成績をあげるために必要なことは?と聞くと多くの生徒が「勉強することです」と答えます。これは「勉強量を増やす」ことを意味していますが、本当にそれがベストな方法でしょうか。
もしかすると勉強の方法が間違っているのが問題かもしれません。あるいは解くテキストが間違っているかもしれません。家で勉強して集中できていないのが問題かもしれません。
このように万人にとって「机に向かう時間を増やすこと(勉強量を増やすこと)」が目標達成のためのベストな方法とは限りません。
テストが終わるたびに、いつも「勉強量が足りなかった、、」と同じ反省を繰り返していてもいつまでも目標には届かないかもしれません。
選択肢が多いと軌道修正ができる
もし選択肢が多ければ、一つのやり方をやってみてダメだったときに別のやり方を試すことができます。「この問題にはこの解決策」と短絡的に決めつけず、多くの選択肢を挙げて、試しては振り返って改善していくことが大切です。
子どもたちが、自分で多くの選択肢の中から自分でベストな方法を選べるように、日頃から選択肢の幅を広げるための準備が必要となります。
選択肢の幅を広げるために有効な質問
では、実際に子どもたちが選択肢の幅を広げるためには、どんな質問をなげかければいいでしょうか?
例としてこんな質問があります。
・「他にはないかな?」
・「過去に一番うまくいったやり方はなにかな?」
・「これまでにない新しいやり方を試してみるのはどうかな?」
・「もし君が先生の立場だったらどんな方法を提案するかな?」
これはほんの一例ですが、
思いつく限りを洗い出したり、過去ベストな方法を聞いたり、思い切ってまだやってないことを試したり、視点を変えるような質問は選択肢を広げるために有効な質問です。
グループワークも有効
また、自分一人で考えるだけでなく、何人かで話し合ってみるのも一つの手です。
話し合っていくなかで、自分一人では考えつかないような視点が得られたり、会話の中から思わぬ気づきがあったりと、モチベーションの向上に繋がったりします。
時には経験談も有効
また、時には自分の経験談を伝えることも気づきに繋がることがあります。
ただいくつか注意点もあります。
・自慢話で終わらないようにする
・相手が鵜呑みして思考停止にならないようにする
自分の経験談を語る場合、つい自慢話や武勇伝のように話してしまわないように気をつけましょう。
また先生と生徒や大人と子どもという関係の場合は、こちらが意図していなくても子ども(特に中学生以下)は自分で考えることなく言われたことをそっくりそのままやるという思考に繋がらないように気をつける必要があります。
注意すべきこと
このステップで特に注意すべきことは、「どんなアイデアも決して否定しない」ことです。
実際に子どもとコーチングしていると明らかに非現実的なことや、目標達成に有効ではないようなアイデアを口にすることがよくあります。
先生「関西大学合格のためにはどうしたらいいと思う?」
Aさん「今日から毎日10時間勉強する!」
先生「昨日まで全然勉強してなかったのにいきなりそれは無理でしょ」
Aさん「んーじゃあ過去問解きまくる!」
先生「いやーまだ過去問は君のレベルに合ってないんじゃないかな。やめといたほうがいいと思うよ。」
Aさん「えー、じゃあ、去年、関大合格したB先輩に勉強方法聞きに行こうかな、、」
先生「でもBさん理系だからあんま意味ないんじゃない?第一人の勉強法がそのまま君に当てはまるとは限らないし。もっとマシな方法ないの?」
Aさん「んー、、わかりません。」
こんな先生、絶対イヤですよね笑
確かに先生の言いたいことはわかりますが、これでは話すことすらやめたくなります。話すことをやめるということは思考が停止することを意味します。
とはいえ、相手の話を聞いていると明らかに矛盾していたり、論理的でないことを相手が言う場合はどうすればいいのでしょうか?
なぜ否定せず一旦「受け入れる」べきなのか
大事なことは、
「いきなり最適な方法にたどり着く必要はない」ということです。
つまり、一旦だぁーっと相手にしゃべらせてその中で最終的に一つの答えが出ればいいのです。
ブレインストーム(いわゆるブレスト)のように一旦相手が思いつくことを否定せずに最後まで聞いて、最後に何が効果的なのかを絞っていけばいいのです。
確かにティーチングよりは時間はかかりますが中長期的に考えれば、この方が自立していきます。
矛盾も非論理的な言葉も一旦受け入れて、話を聞いていくと本人の方から「あ、これ矛盾してるわ」「あれ、これは違うか」と本人自身に気づき始める日が必ずきます。
人は自分がしゃべりながらも自分の耳で自分の言葉を聞いていて、話せば話すほど自分の頭の中にある曖昧な考えが明確になり気づきがうまれやすくなります。
これをコーチングの用語で「オートクライン」と言いますが、要は人はしゃべればしゃべるほど、賢くなるということです(かなり乱暴な言い方ですが笑)
特に自分の頭で考えることに慣れていない子どもには、
「もっと話したい」と思わせるような雰囲気づくりが大切です。
まとめ
コーチングのスキルを教育に生かす!第四弾となる「選択肢の創造(他の選択肢はないかを考える」についてコーチングのステップをご紹介しましたがいかがでしたでしゅうか?
塾や学校でコーチングを取り入れてみたいという方や現場で実際にコーチングを取り入れているがうまくいかない、という方のヒントになれば幸いです。
次回は最後のステップ⑤「意思の確認、計画の策定」(Will)実現に向けてのやる気を確認するについてです。